#3 Choro resposta ao Sumaré / ESMÊ

Choro Paulistanoという言葉を聞いたことがあるだろうか。そもそも、ブラジル音楽を聞いたことがない人にはChoroが何かというところから始めなければならないが、詳しい話は他の日に書く事にする。簡単にいうとChoroとはリオデジャネイロで生まれた音楽なのだが、そのChoroがリオから広まり、サンパウロでも演奏されるようになった。そのうち、サンパウロの音楽家たちは自作のChoroを演奏するようになり、それをChoro Paulistanoと呼ぶようになった。

Choro Paulistanoの代表的な作曲家でカヴァキーニョ、ギター、ベース奏者であるEsmeraldino Sallesは、独特な作風でサンパウロのショーロ演奏家たちから愛された。そんなEsmeraldinoの生誕100年を祝って、Gian Correa、Fábio Peron、André Mehmari、Fernando Amaroの4人は“ESMÊ”を結成した。GianとPeron、またMehmariとPeronは普段からよく一緒にショーロを演奏しているが、カルテット自体はプロジェクトのために作られたグループで、ドラムのFernando Amaroは大学の同士であるFábio Peronに誘われて加入した。

Esmeraldino Salles

50年代からラジオ収録の仕事をしていたEsmeraldinoは、その頃に流れていたジャズなどアメリカ音楽やBossa Novaのハーモニーの影響を受けており、彼の作風はトラディショナルなChoroと比較すると少し風変わりな雰囲気を出していた。また、SambaとChoroの中間のようなリズムも特徴的である。
このプロジェクトの面白いところは、オマージュとしてEsmeraldinoの曲を演奏するだけでなく、それに対して“Resposta”と称する返答の楽曲を収録しているところである。Respostaには、Esmeraldinoの特徴であるジャズ的なハーモニーや、彼の曲の一部フレーズを引用し、それに現代的なエッセンス(即興やアレンジ)を加えて表現している。
私は2016年にアヴァレで開催されたショーロフェスティバルにてESMÊのショーを観ている。彼らの録音直後、アルバムがリリースされている前で、Mehmariは他の公演と重なってDebora Gurgelが代役を務めた。これまで私が観た中でも5本の指に入るほどに感動したショーだった。まるでオーケストラを聴いているようなゴージャスなサウンドで、Choroのイメージがガラリと変わってしまったのである。Fernando Amaroは私的にはアグレッシブなドラマーで、観るまではパーカッション的なドラマーの方が合うのではと思っていたのだが、実はそれが良かったようで、確実に新しいサウンドを生み出していた。

プロジェクトの中心人物であるGianは、Esmeraldinhoの息子Pauloと、もう一人のChoro Paulistanoの代表的な人物であるピアニストで作曲家のLaércio de FreitasにEsmeraldinhoについての供述を求めている。
そこで、Pauloは父について「とにかく明るい人。父が気を落としたり、悲しんでいるところをみたことがない。一度だけ、歯が痛くて困らせたときぐらいかな。家ではあまり楽器を弾いたりしなかった。」「父は楽譜を読まず、全て耳で聞いて覚えていた。録音の際も、楽譜は読まずにリハーサル中に曲を耳で覚えて録音、プロデューサーは録音後にスタジオで父のカヴァキーニョの音だけをピックアップして聞いて『こんな風には書いてないけど、(演奏が)良いからこれでよし』と言ったそうだ。」と話す。
Laércioは「Homem enorme de alma limpa*、彼が人のことを悪く言っているところを一度も見た事がない。Choroに興味をもたせてくれたのは彼だった。彼はイントロをつけるのが上手で、一緒に演奏する際は、それをよく聴いて覚えた。」「当時住んでいたリオから、録音の仕事でサンパウロへ行った際にSumaréにあるEsmeraldinhoの家を尋ねた。家にいた彼を引っ張りだし、とあるショーへ連れて行く。開演前にピアノに座って自分の作った曲を披露した。彼は気に入ってくれてもう一度弾いてくれと頼んだ。弾き終わったあとに、実はこの曲の名前は“Ao Nosso Amigo Esmê (私たちの友人Esmêへ)”なんだと伝えると、彼は泣いて喜んでくれた。」
と思い出を語った。この動画はGianのサイトで観ることができる。
*Homem enorme de alma limpa 直訳すると澄んだ心を持った大きな男

“Choro resposta ao Sumaré”というのは“Uma noite no Sumaré (スマレの夜)”という EsmeraldinoとOrlando Silveiraの共作に対する返答である。Sumaréというのは、Laércioの話でもあったように、Esmeraldinoの家があった場所である。
今回は1958年に録音された“Uma noite no Sumaré”のリンクも張っておく。

アルバム: ESMÊ (2017)
作曲:André Mehmari, Fábio Peron, Gian Correa
録音:
André Mehmari | Piano
Fábio Peron | Bandolim
Fernando Amaro | Bateria
Gian Correa | Violão 7 Cordas

【参考】https://www.giancorrea.com.br/copia-esme-cd-ok

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