ブラジル 誕生秘話 音楽にまつわる観光スポット

#15 Funk de Bamba / Funk Como Le Gusta

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南米最大の都市であるサンパウロの夜は、新しいものや面白いものが好きな人をすぐに魅了するだろう。毎日のようにどこかで刺激的な集まりが繰り広げられている。私はそんなサンパウロの街が大好きだ。治安が悪いところを除いては。

サンパウロはその都会的な雰囲気と洗練された文化だけでなく、そこで暮らすブラジル人の現実を垣間見ることができる。リオデジャネイロの絶景と比べてしまうのは良くない。情景だけで言えば南米の主な観光地から外されてしまうサンパウロだが、ここの面白さは一か月、いや二週間ほど現地をよく知る人と過ごせばわかるはずである。

2010年、西荻窪のブラジルコミュニティAparecidaの店主Willie氏が主宰するツアーに参加し、初めてブラジルに足を踏み入れた。
真夏のリオデジャネイロに着いた一行は、夢にまでみた写真通りの風景に圧倒される。天気に恵まれ、主な観光地やAntônio Carlos Jobimに纏わるスポット、Maria Cleuzaのショー等を楽しみ、サンパウロへ向かった。

リオとは対照的に、サンパウロは全くイメージのない新しい世界だった。
とある夜、Willie氏がおすすめるグループのショーがあり同行することにした。向かった先は高級なレストランや住宅が並ぶモエマ地区にあるBourbon Streetというお店だった。入場料も比較的高めの設定、身分証のチェック、更にはドレスコード(ビーチサンダルと男性のショートパンツは入場不可)もある良い感じのナイトスポットである。出演はロックバンドが多いが、ジャズ、ブラジル音楽も聴くことができる。
中に入るとエアコンがガンガンに効いていて、着飾ったブラジル人たちがカウンターで生ビールやカクテルを飲みながらサブステージで行われているギタートリオの生演奏に耳を…全く傾けずに楽しそうに会話していた。

ブラジルの代表的なお酒であるサトウキビの蒸留酒カシャッサを使ったカクテル“カイピリーニャ”を片手に、ショーの開始を待つことにした。
週末のショーの開始時間はびっくりするぐらい遅い。更には時間通りに始まらないのがお約束である。この日も確か23時スタートのはずが、結局始まったのは24時頃だった。
会場が暗くなり、どこからともなく太鼓の音が聴こえてくる。その音はだんだん近づいてきて、10人ほどの怪しげな赤いつなぎを着た集団がアリーナの真ん中を陣取った。思いきり太鼓を叩き、会場が盛り上がるとそのままステージに登っていく。彼らがFunk como le gustaである。

Funk como le gustaは1998年から正式に活動しているが、元々はジャムセッションをする集まりであった。ジャムセッションとは音楽家たちが即興で演奏を行うイベントで、同じ曲、同じ演奏者でもその場の雰囲気によって創り上げられるものが変わる面白さがある。同時に音楽家が自身の腕前を披露する場所でもある。
サックスを担当するKito Siqueiraは「当時のサンパウロは何も面白いことが起こっていなかった。仕事はカバーバンドばかり。とにかく演奏しよう!って、仲間たちと取り合ってジャムセッションを始めたんだ。」とインタビューで話している。噂は瞬く間に広がり、フラストレーションのたまった音楽家達が集まり、お客さんも入場に列が出来るほど増えた。当時、ジャムセッションが各地で行われるようになっていく。
彼らは踊れる音楽としてブラックミュージックとラテン音楽に目を向けた。もちろんブラジルのエッセンスも忘れずに。
セッションにはゲストDJも参加しており、彼らがかけた音楽からインスピレーションを得て即興で曲が完成することもあったそうだ。

メンバーらは、音楽学校のホールに照明やDJブースを運び、200人程度の集客を目途としたイベントを毎週開催することにした。特に大々的な宣伝は行わなかったにもかかわらず、初回のゲストが有名な歌手Fernanda Abreuということもあり、予想以上の集客を記録する。メンバーのHugo Horiは「当時はSNSもあまり普及していなくて。それにサンパウロは人が集まるところに限って広告に載らないっていう面白いことがあるんだ。広告より口コミが強かったりする。」とインタビューで話していたのが印象深い。
その夜に、Funk como le gustaというグループ名がつき、2回目のイベント開催時にはレコード会社とCD制作を行う話が始まったという。更に噂は広まり、用事でサンパウロを訪れたMarcelo D2やEd Mottaも観客として足を運んではステージから呼び出され飛び入りで歌ったそうだ。2009年、2013年に来日公演を果たしているPaula Limaは結成当時のメンバーでもあり、脱退してからも時々一緒にライヴをしている。

Funk como le gustaはこれまでに5枚のアルバムを制作した。はじめのうちはJorge ben jor等の有名曲のカバーもレコーディングしていたが、独自のスタイルを創り上げ、今では彼らのオリジナルが彼らの有名作品となった。
誰かが曲を書いてくることもあれば、結成当時と同じように、スタジオや本番前の音響チェックの際に実際に演奏しながら作ることもあるそうだ。まずはギター、ベース、ドラムなどのリズムセクションからとりかかり、トロンボーンのTiquinhoが管楽器のアレンジを書き上げる。急ぎの場合は徹夜で仕上げなければならないそうだ。ちなみにTiquinhoはClube do BalançoやOrquestra Sagaの管楽器アレンジも手掛けている。

私がFunk como le gustaを観た日、会場にいた人たちは自分の感じるがままに踊っていた。ビールの入ったグラスを片手に、時には歌ったり、時には全く音楽を聴かずに大声で話したり、柱の傍ではメンバーの彼女が一人踊り狂ってるし、うしろではレズビアンのカップルがキスをする。バーカウンターで躊躇していると、隣の人がすぐに話しかけてくる。(ナンパだったが)
演奏も素晴らしかったけど、カイピリーニャの酔いもあってか、最高に楽しい時間を過ごした。
サンパウロの人々は常に面白いものを探している。
SNSが普及した今でも、誰かに面白い場所を尋ねると、必ず答えが返ってくるだろう。

【アルバム】Roda de Bamba (1999)
作詞作曲: Eduardo Ibeas, FCLG, Fernanda Abreu
録音: Funk Como Le Gusta
特別参加: Fernanda Abreu, BiD
【参考】
https://www.youtube.com/watch?v=PS5gpgzQhtw
https://www.funkcomolegusta.com/

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