Nordeste ブラジル 文化

#11 Olha Pro Céu / Trio Nordestino

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6月になると、サンパウロはびっくりするぐらい肌寒くなる。初めて長期滞在していた際に、こんなに寒くなるとは想像もしておらず、2月に日本を出国する際に着ていたダウンコートが大活躍したのだった。私が住んでいる地域の家の構造は、寒さよりも暑さに耐えられるように出来ていて、冷たいすきま風が入る。更にこの時期の電気シャワーもなかなか辛い。ブラジルではバスタブに浸かる習慣はなく、電気シャワーは水量が増えると温度も下がるので、熱々のシャワーを出したいときは水量を減らさなければならない。そんなこともあり、冬になると全体的に街も元気がないような気がする。寒さに弱い人が多いのだ。

そんな冬にも楽しみがある。そのひとつが、Festa Juninaである。
Festa Juninaとは6月に行われるキリスト教の3人の聖人Santo Antônio、São João、São Pedroに纏わるお祭りの総称で、一大イベントはSão Joãoの誕生日6月24日を祝うものであり、23日より2日間にかけて行われる。
Festa de São Joãoの起源は中世以前、夏至と冬至に自然と豊穣の神々に感謝の意を込めてお祝いされていたものに、キリスト教が宗教的な意味合いを与えたものとされる。ポルトガルではSão Joãoのお祝いと偶然にも重なったために、Festas joaninasと呼ばれるようになった。
ブラジルにはポルトガル植民地時代にポルトガル人によって伝えられ、多様な人種による変化を伴い、今のスタイルとなる。ブラジル先住民の収穫祭の影響もあるようだ。今ではブラジル各地で親しまれているお祭りだが、主に北東部で大々的に祝われていたもので、ブラジル最大のFesta de São Joãoがパライバ州のCampina Grandeで行われている。マトグロッソ州など内陸部では別の方法でお祝いが行われるようだが、今日は北東部発祥のFesta Juninaの特徴を紹介する。

Festa Juninaの食べ物
・ポップコーン
・とうもろこしのケーキ
・Pamonha (潰したトウモロコシの粒を葉で包んで茹でたもの)
・Canjica (専用のトウモロコシを練乳とココナツミルクで甘く味付けしたもの)
・Paçoca、Pé de moleque (ピーナッツのお菓子)
・Arroz-doce (お米を牛乳で甘く煮たもの)
収穫時期であるとうもろこしを使った食べ物が多い。基本的には地域もしくは友人同士が集まる村祭りなので、料理ではなく、簡単につまんで食べられるものがメインである。

Festa Juninaの飲み物
サトウキビの蒸留酒Cachaçaに果物やシナモン、生姜などを加えて煮たQuentãoや、ホットワインが用意される。Quentãoは甘く飲みやすいので、飲みすぎには注意。

Festa Juninaの特徴
・田舎風の服装 (チェックのシャツ、麦藁帽子、ボリュームのあるワンピース、繋げられた眉毛、ひげ、真っ赤なほっぺにそばかすメイク等)
・天井に飾られるカラフルな旗
・喜劇やゲーム
・ForróやQuadrilha juninaとよばれるダンス
・焚き火
Quadrilha juninaはフランス王宮を起源し、時を経て農民が楽しんだダンスであり、ブラジルのQuadrilhaはフォークダンスのようなシンプルで誰もが楽しめるものである。
焚き火は23日の夜に点火されるが、実際はFesta Juninaの象徴として日に関係なく点火される場合もある。

Festa Juninaの音楽
南米のお祭りに踊りは付き物である。Festa Juninaで聴かれるのは北東部発祥のForróとよばれる音楽である。北東部で多く使われていたアコーディオンとトライアングル、ザブンバ *の登場により、Festa Juninaの踊りはより軽快で楽しいものとなった。そこで忘れてはならないのがLuiz Gonzaga (1912-1989)の存在である。彼は多くの名曲を残し、ブラジル全土に北東部の音楽を広めた重要人物だ。詳しくは他の日に書くことにする。
ちなみにForróはFesta Juninaの時だけに聴かれるものではない。北東部では生活の一部のようなものであるし、サンパウロでもCasa de Forróと呼ばれるForróが聴ける(というよりも“踊れる”と書いたほうが正しそうだが)場所が存在する。
*ザブンバ…両面に皮が張ってある太鼓、2本のバチで両面を叩く

Forróのトラディショナルな編成といえば、前記したアコーディオンとトライアングル、ザブンバのトリオである。メンバーはヴォーカルとコーラスも一緒に担当する。
1958年にサルヴァドールにて誕生したTrio Nordestinoは、現在も活動する伝統的なForróのグループである。Lindú (アコーディオンと歌)、Coroné (サブンバ) 、Cobrinha (トライアングル)によって結成され、Luiz Gonzagaの御礼を受け、これまでに42枚のCDをリリースしている。現メンバー (下記表参照)は結成者たちの息子や孫である。Coronéの孫にあたるCoronetoの“Neto”とは孫という意味で、非常に面白い芸名を思いついたと感心してしまった。
*afilhado…カトリックの神に対する契約上、LindúはBetoの代父にあたる

Luiz Márioトライアングル、歌Lindúの息子
CoronetoサブンバCoronéの孫
Beto SousaアコーデイォンLindúのafilhado*
Trio Nordestino 現メンバー

Trio NordestinoはAlceu Valença、Elba RamalhoやDominguinhosなど有名ミュージシャンの録音に参加しているが、演奏がForróに限定されている彼らはCDランキング上位になるような大ヒットグループではない。60年以上も活動を続けていけるのには興味深い訳がある。彼らの主な活動とは、いわゆる地方巡業である。
ブラジルは広く、地方に行けば行くほど違った文化が見られるのだが、音楽イベントもそのひとつである。週末、何もないまっさらな土地に、ド派手な舞台照明と爆音スピーカーがいきなり現れるのだ。来場者は音楽と共に踊りまくり、演奏を聴きに行くというよりは、ひとつの地域交流のような意味合いもある。彼らのような“踊れる音楽”は都会に比べて夜の娯楽が少ない地方では大人気なのだ。
彼らのウェブサイトをみると、グループのバイオグラフィ、ディスコグラフィだけでなく、舞台の配置や必要機材、控え室に用意される軽食の指定事項まで、彼らを呼ぶために必要な事項が掲載されている。このように活動するグループはブラジルでは珍しくない。
最近の流行りも考慮し、近年のTrio Nordestinoはトリオでの演奏ではなく、ベースやドラム、コーラスが入ったアレンジが主流となっている。ちなみに彼らのCDはウェブサイトで全曲ストリーミング再生できる。
今回選んだ“Olha Pro Céu”が収録されるアルバムは、上質なブラジル音楽を届けるレーベルBiscoito Finoによるプロジェクトで、北東部を代表する作曲家に対するオマージュである。“Olha Pro Céu”はLuiz Gonzagaの数ある有名曲のひとつで、Arrasta-péという非常に軽快なスタイルの曲。これまで友人間で行われるFesta Juninaに何度も参加したが、この曲がかかるとQuentãoで良い感じに酔っぱらっているのもあり、みんなで輪になって踊り、Festaは最高潮に達するのであった。

アルバム: Canta o nordeste (2017)
作詞作曲:Luiz Gonzaga / José Fernandes
録音:Trio Nordestino 他不明
【参考】https://www.todamateria.com.br/festas-juninas/
https://cartacampinas.com.br/2018/01/trio-nordestino-canta-o-nordeste-e-homenageia-joao-do-vale-e-luiz-gonzaga/
https://nipo-brasil.org/archives/11899/

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