Instrumental ブラジル 文化

#10 Meu Fraco É Café Forte / Dom Salvador & Rio 65 Trio

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珈琲は好きか?答えはもちろん「はい」である。1日の始まりに美味しい珈琲が淹れられると、よい日を過ごせるような気がする。
日本では世界の美味しい珈琲豆を簡単に手に入れられるため、ブラジル産の珈琲を飲んだことがある人も沢山いるだろう。また、最近は珈琲を求めながら素敵なお店をさがす“カフェめぐり”を楽しみのひとつとしている人も多い。
ブラジルは珈琲の輸出量1位という印象から、現地で飲まれる珈琲はさぞかし美味しいだろうと思われている。サンパウロやリオデジャネイロなど、観光主要都市の“カフェめぐり”という記事をみかけることもあるが、実際にブラジル人にとっての珈琲とは、そんなにお洒落なものではない。私はサンパウロ郊外のとある街に6年住んでおり、行動範囲はサンパウロ州内、州外に行くことは年に1~2度程度なのでブラジル全体の平均は話せないが、ひとつの話として気楽に読んでもらいたい。

まず、多くのブラジル人が珈琲好きであるということは、間違いないと思う。
朝はフランスパンにバターを塗ってフライパンで焼いたPão na chapaもしくはPão de queijoと共に一杯。昼食後に一杯。夕方に軽食と共に一杯。中には夕食後に一杯飲む人もいる。
家庭で飲まれる珈琲はCafé Coadoと呼ばれるドリップ式が主流である。ドリッパーとペーパーフィルター、もしくは布のフィルターを使用する。多くの人が目分量で淹れ、蒸らしなど気にしないことが多い。中にはお湯を一気にドリッパーに注ぐツワモノもいる。珈琲の抽出先は耐熱性のある水筒もしくはポットで、これをテーブルに置き、各自が好きなだけ飲むスタイル。
イタリア式のマキネッタや珈琲メーカーを使う人もいる。エスプレッソマシーンが自宅にあるのは、相当な珈琲好きが中上流階級の家庭だろう。インスタントコーヒーは好まれない。
このように水筒やポットに作りおきするスタイルは、家庭だけでなく軽食店や、ランチを提供するレストランのレジ隣に置かれた無料珈琲でもみることができる。ちょっとお洒落なパン屋さんやレストランならエスプレッソを飲むことができる。
エスプレッソがあるお店なら、いくつか違った珈琲を提供している事が多いので、ここでいくつか紹介しよう。

  • CAFÉ CURTO / エスプレッソ 25~35 ml
  • CAFÉ LONGO / Curtoよりも少し多めの水で抽出したエスプレッソ
  • CAFÉ CARIOCA / エスプレッソに水を足したもの
  • CAFÉ RISTRETTO / Curtoよりも少し少なめの水で抽出したエスプレッソ
  • CAFÉ COADO / ドリップ式で淹れたコーヒー
  • CAFÉ COM LEITE / Café coadoに温かい牛乳を足したもの
  • PINGADO / 温かい牛乳に少量のCafé coadoを足したもの
  • CAFÉ LATTE / エスプレッソに温かい牛乳を足したもの
  • CAFÉ COM CHANTILLY / エスプレッソに生クリームをのせたもの
ウバトゥバにあるブラジル初の全粒粉専門のパン屋にてPão na chapaとエスプレッソ(炭酸水付き)

サンパウロでエスプレッソを注文すると、クッキーやチョコレートなどの小さな洋菓子と炭酸水がついてくることがある。これはエスプレッソを飲む前に味覚をリセットするためのものである。それに対してバール* で飲むCafé coadoはCopo Americanoと呼ばれるブラジルではお馴染みのコップに注がれて、一瞬で提供される。値段はもちろんエスプレッソの方が高くつく。Café coadoはだいたいR$2~3といったところか。正直、バールの珈琲はお洒落とは程遠い。
* バールとは、モーニング、ランチ、軽食、夜はバーと1日営業する飲食店。値段もお手軽で大変助かる。

バールで頼んだPão na chapaとPingado

1727年から珈琲栽培が始まり、奴隷制度や移民の影響もあり、ブラジルの珈琲産業はブラジル経済に大きな変化をもたらした。未だに珈琲生産量世界1位であるブラジルであるが、ブラジル人は口を揃えて「良質な豆は輸出される。」と悲しそうに話す。家庭で飲まれている珈琲の品質は輸出されているものには劣るかもしれないが、個人的には十分美味しいと思う。
サンパウロ州のスーパーで購入できる珈琲で、一般的な有名メーカーはMelitta、3 Corações、Pilão、Cabocloあたりだろう。値段は500グラムでR$8~12程度。もちろん、より厳選された豆や、オーガニック豆も売られている。
ここで書いておかなければならない重要事項がひとつある。
びっくりするぐらい甘い珈琲が好きな人が多いのだ。最近はブラックコーヒーを好む人も増えてきたが、基本的に砂糖もしくは、Adoçanteと呼ばれる人口甘味料をたっぷり入れる。自宅でドリップ珈琲を淹れる際に、沸騰したお湯に予め砂糖を入れる場合もある。前記したレストランの無料珈琲はかなり高い確率で砂糖入りである。ここ最近はサンパウロ市内のバールで珈琲を頼むと無糖で提供されるが、砂糖の袋を2~3袋渡される。
ブラジル人は濃い珈琲が好きだという話を聞いたことがあるが、確かにそうかもしれない。しかし大量に砂糖を入れるので肝心の珈琲の味がわからなかったりする。余談だが、サンパウロ市内にもstarbucksは存在するが、珈琲を飲むというより、フラペチーノを飲む場所という認識である。ちなみに冷たい珈琲を飲む習慣はない。
これはあくまでも私の経験から書いたものであって、ブラジルは広いので実際の平均はわからない。それでも「Um dia sem café é como...」(珈琲ない1日なんて…)という言葉があるように、多くのブラジル人に一日の始まりに珈琲が欠かせないのは事実である。

今日はそんな珈琲に関する曲を紹介したい。
“Meu Fraco É Café Forte”は、和訳すると「僕は強い珈琲に目がない」という感じだろうか。
作曲者のDom Salvadorは、1938年サンパウロ州リオクラーロ(Rio Claro)に生まれた。11人兄弟の中で育ったSalvadorは兄弟の影響でドラムを始め、先生が引越しをしたのを機に吹奏楽器を覚えようとしたがヘルニアのため断念。そこでピアノを始める事にした。家にはピアノがなく、先生が紙に描いた鍵盤を使って練習していた。地元で演奏活動をしたのちに、1961年Bossa Novaがアメリカにて流行りだした頃にサンパウロへ。そこで生涯の伴侶となる歌手のMariaと出会う。間もなくリオデジャネイロへ移り、数多くの有名ミュージシャンが演奏するナイトスポットであったBeco das Garrafas周辺でピアノを弾いて生活していた。その頃、ドラムのEdison MachadoとベースのSérgio Barrozoと共にRio 65 Trioを結成し、Samba-jazzのアルバムをリリースする。
リオでは、Samba-Jazz以外にもSamba-funk、Samba-Soulの誕生に関わったSalvadorであったが、酒も飲まず薬もやらない彼にとって、当時一緒に演奏していたミュージシャン達とすれ違いが多くなっていく。クレジットが残されているものは少ないが、数多くのレコーディング、編曲に関わりつつも、1973年にはニューヨークへ渡り、再スタートを切ることを決意する。バーやレストランでピアノを弾き始め、多くの音楽家からラブコールを受けるが、Salvadorは現在* もブルックリン区にある高級レストランにてピアノを演奏しながら暮らしている。レパートリーは4000曲にも及ぶそうだ。
この演奏は2015年、Rio 65 Trioの50周年を祝って、ニューヨークのカーネギーホールで行われたコンサートのライヴ録音である。ベースはオリジナルメンバーであるSérgio Barrozo、ドラムは1990年に亡くなったEdison Machadoに代わってDuduka da Fonsecaが務めた。
* 取材は2018年に行われた

アルバム: Dom Salvador & Rio 65 Trio Live In Zankel Hall At Carnegie Hall (2019)
作曲:Dom Salvador
録音:
Dom Salvador | Piano
Sérgio Barrozo | Contrabaixo
Duduka da Fonseca | Bateria

【参考】
http://blog.clubecafe.net.br/voce-conhece-os-tipos-mais-tradicionais-de-cafezinho/
https://www.globalnote.jp/post-1014.html
http://enciclopedia.itaucultural.org.br/pessoa359506/dom-salvador

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